編集制作/基礎知識

編集基礎知識

小中高校生向け学習教材の制作は、子供たちの教科理解をサポートする教材作りという性格上、さまざまな決まり事や制約の中で編集が行われますが、一般的には次のような作業内容と流れになります。
この「編集基礎知識」が、これから学習教材の編集制作に取り組もうとされる方への一助となれば幸いです。

作業区分

1.企画

(1)企画書の作成
  (仕様:判型・色数・頁数・部数・製本形態等/内容:教科・学年・構成等)

企画は通常、版元出版社の編集部で作成されますが、外部スタッフ(編集プロダクションやフリー編集者)が提案し、出版社と協議を重ねながら仕上げることもあります。

(2)見本原稿の作成

頁単位での構成要素や字詰・行数等が分かる内容にします。
頁内容やレイアウトのパターンごとに作成することが望ましいので、1冊全体では数種類の見本原稿が必要になります。

(3)執筆要領・編集要領の作成

執筆要領は見本原稿に沿って、より具体的にわかりやすく読みやすい形式で記述し、例外なども付記しながらまとめます。1冊の教材内で原稿内容の質の差が執筆者間で出ないことが大切です。

(4)工程表の作成

執筆から校了または製品完成までのスケジュールをまとめます。

例えば1冊100~150頁程度の学習教材では、執筆から校了(組版データの完了)まで3~4ヶ月を要します。

工程の区切りは概略次のようになります。

  • 1. 執筆依頼~原稿アップ
  • 2. 原稿校閲~原稿整理~組版入稿
  • 3. 初校入手~校正戻し
  • 4. 再校入手~校正戻し
  • 5. 三校(念校)入手~組版データ校了
  • 6. 面付・刷版・印刷・製本~製品完成

(5)デザイン・見本組の作成

ノンブル・柱やタイトル部分を含むページ全体のデザインは、通常、デザイナーに依頼します。

デザイナーは、Adobe IllustratorやInDesignなどで紙面をデザインします。

デザイナーから提出されたカンプを検討、修正した上で、組版所へ見本組を依頼します。

(6)見積書の作成

制作に関する見積書の内容は、受注内容によって概要次のように区分されます。

  • 1. 企画料
  • 2. 原稿執筆料
  • 3. 編集料(デザイン料は別立て)
  • 4. 組版料
  • 5. イラスト・図版料
  • 6. 印刷・製本料

※6. の印刷・製本については、版元の関連会社で行うことが一般的です。

見積書作成の際に、受注の作業内容について正確に確認することが重要です。

★守秘義務について

編集会社やフリー編集・校正者は、常に複数の出版社から業務を受注することが多く、場合によっては同時期に、競合する出版社からの業務を相前後して行うこともあります。

企画内容に関する守秘義務については、通常、制作物の受発注契約書等に明記されますが、契約書の有無に係わらず、受注した企画商品に関する守秘義務は遵守しなければなりません。

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2.執筆

(1)執筆者選定→執筆依頼

学習教材の執筆者は、

  • 1. 現職教員
  • 2. 塾講師
  • 3. 教員・塾講師経験者
  • 4.(1.~3.以外で)教職免許をもつ方
  • 5. 教材編集の経験者

などの方々が中心となっています。

教えることと教材の原稿を執筆することは相当異なりますので、執筆者の適正や経験を見極める必要があります。

(2)原稿入手→原稿校閲→原稿修正依頼

原稿の良否が後工程での編集作業量を大きく左右します。
どこまで完全な原稿に仕上げられるかは執筆要領の内容もさることながら、執筆者と編集者のコミュニケーションにかかってきますので、執筆者と連絡を密にとることが重要です。

国語教材での著作物からの引用については、引用の範囲や著作権への対応ルールが定められます。
基本的には版元編集部の方針を確認してそれに従いますが、著作物引用に関する権利侵害は非常に注意すべきポイントです。

原稿校閲は版元編集部で行う場合が多く、その校閲内容を原稿に反映させる作業は著者に行ってもらうことが望ましいのですが、時間的な理由などにより、受注サイドの編集スタッフが原稿修正を行うこともよくあります。

原稿をワードなどで入力し、メールに添付して脱稿するスタイルが定着しており、ワープロソフトやメールソフトは自在に使える必要があります。

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3.原稿整理・組版入稿

(1)用字用語・文体・体裁の統一

教科・学年や準拠する教科書等によって用字用語が異なることが多いので要注意です。

解説や問題での文体や設問文の言い回しの統一を行います。

(2)組版指定

基本書体や基本体裁以外の部分へ、文字サイズや書体・色等の指示を加えます。

ワードや一太郎などで作成された原稿の文書ファイルは、組版入稿時に原稿に添付するか、テキストデータに変換して渡すことにより、組版所での文字入力の手間が多少省けます。

テキストデータの有無によって組版料金が若干異なるケースがありますので、見積書作成段階で確認しておきましょう。

(3)イラスト・図版依頼

教科によって種類や量に差がありますが、作画依頼時にはイラストレーターや作図者が正確に作成できる原稿指示が必要です。
<主な種類> 人・物・動植物画、挿絵、実験器具画、数学の図形、グラフ、地図等

Adobe Illustratorで作画するケースが多く、データをCD-R、メール添付、サーバ経由等で受け渡ししますが、データの保存形式を確認しておく必要があります。(文字はアウトライン化した上で、EPSファイル形式での送受信が一般的です。)

(4)写真手配

本文中で使用する写真の借用先は主にフォト・エージェンシーとなりますが、写真内容によっては、市区町村・外国の観光協会や神社・寺院から借りることもあります。

最近では市販のフリー・フォトアルバムの種類も増えており、その中から使用する場合もありますが、著作権についてはきちんとクリアしておかなければなりません。

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4.組版

(1)組版の種類

主なDTPソフトには、Adobe社「Indesign」、Quark社「QuarkXPress」、モリサワ「MC-B2」、写研「Singis」「SAMPRAS-C」、キャノンITソリューションズ「EDICOLOR」などがあります。

(2)基本体裁に沿った組版と内校

見本組で作成した統一体裁でページ組版が行われます。
組版入稿の際、原稿の文字データはサーバへの送信やメール等で添付送信することが多くなりました。

組版所では、組み上がった内容を組版所内部で校正(内校[うちこう])を行い、修正したものを初校校正ゲラとして編集サイドへ提出します。

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5.編集・校正

学習教材の校正では、いわゆる誤字脱字の「文字校正」とともに「内容校正」を行います。
内容校正では、解答ミスなど学習内容上でミスがないか、解説が正しいか、学習範囲を逸脱していないかなどをチェックします。
校正者は通常この2種類のチェックを同時に行うことになります。

(1)初校校正

原稿と付き合わせる原稿照合校正と、素読みでの文字校正と内容校正を、複数の校正者で行います。

編集担当者は、複数の校正ゲラの朱入れ内容を吟味して一本化し、組版所への初校戻しを行います。

イラスト・図版類のチェック(本文の記述と矛盾がないか、正確な情報に基づいた図版かどうか等)も初校時に行い、作画者に修正依頼して完成データを組版所へ渡す手配をします。

画像データを直接入稿する場合は、保存形式や受け渡し方法について組版所と確認をとっておきます。

レイアウトの統一、記号類の使い方、本文の言い回しなどの統一は、初校段階で済ませることが大切です。

イラスト・図版類の本文への貼り込みは、図版作成スケジュールの関係で再校時になることが多いのですが、初校時から貼り込まれる工程を組めることが望ましいです。

(2)再校校正

初校ゲラの朱字照合、素読み校正等を行い、組版所への再校戻しゲラを作成します。

イラスト・図版類は再校時には本文の指定箇所に貼り込まれますが、工程の組み方によっては初校時に合流できる場合もあります。

(3)三校(念校)

再校ゲラの朱字照合を中心に、全頁の基本的な点検を行います。
再校時に修正が多かった場合には、再度素読み校正で念を押す必要があります。

三校戻しで責了(組版サイドで責任もって校了してもらう)とするか、修正頁のみを再出力して確認をとる必要がある(要念校)かは、修正の内容や度合い、スケジュール等で決めます。

行数の増減に関わる朱入れがある場合、前後の行や頁に影響が出ることもあるので注意が必要です。

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6.最終チェック

★フィルムを出力をしないCTP(Computer to Plate/ダイレクト刷版)

2000年頃までは組版データをフィルムに出力して色校や青校を印刷し、面付や色相をチェックしていましたが、今では組版のデジタルデータから直接、刷版(さっぱん:印刷用のアルミ板)を出力するCTP方式が一般的です。

CTP方式ではデジタルプルーフ(DDCP[Direct Digital Color Proofing])という簡易色校を出力して面付状態や色味を確認します。
この簡易色校では、CMYKの4色印刷ではないので、実際の印刷機とは異なり、カラーコピーのようなべたついた感じの色合いになります。

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7.印刷・製本

(1)印刷

印刷会社でオフセット印刷されます。
※印刷部数が200~300冊程度の場合はオンデマンド印刷を用いることもあります。

(2)製本

製本は主に、
1. 無線綴じ
2. 中綴じ
3. 平綴じ
などの綴じ方で行われます。

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8.その他

  • (1)完成した書籍は、版元より数冊献本してもらうように依頼しましょう。
  • (2)元原稿・原稿校閲紙・校正戻しの朱入れゲラ等は、製品完成後1~2ヶ月は保管しておきましょう。
  • (3)企画書・マニュアル類は、資料としてまとめて整理しておきましょう。

★編集制作での様々な経験や実績を、具体的な印刷物で残しておくとよいでしょう。